2012年6月20日 (水)

完全なる首長竜の日

完全なる首長竜の日  乾緑郎 ☆☆

ミステリーというかSFというか。

少女コミックの作家が自殺未遂の末、昏睡状態にある弟とコンタクトをとる話。そのコンタクトの取り方がこの話のキモ。コーマワークセンターという医療施設でセンシングという技術を使って患者と意識の中でコミュニケーションをとることができる。一旦意識の中に入るとそこはバーチャルいうか夢の中の世界。普通に昏睡患者と話せてしまう。しかしこのシステムには副作用があって、センシングから戻った後も夢見心地が続いて現実との境界線が曖昧になっていくという‥

本編中でも触れられているが「胡蝶の夢」をモチーフに夢と現実の間をフラフラ行き来する浮遊感を味わえるミステリーである。ネットの書評では「インセプション」との類似性が盛んに言われているが、まあ、ある意味古典的なテーマと言えばテーマである。

(以下、他作品のネタバレあり)

私の評価が低いのはやっぱりオチが見えてしまったせいが大きい。自分は岡嶋二人のあの作品を直ぐに思い出してしまったので‥、ただ少しフォローすると、オチだけではなく、非常に読ませる力があるのも事実です。


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2006年8月28日 (月)

探偵ガリレオ

「探偵ガリレオ」東野圭吾☆☆☆

いかにも東野圭吾的な着想で、一風変わった推理小説。
物理的なギミックを駆使してトリックを楽しむ推理小説は昔から多くの読者に好まれてきているが、この本の殺人トリックは本当に物理”学”的。レーザーや超音波などのハイテクな原理を駆使して殺人が起こる。これを物理学者湯川が謎を解くという具合。
どの話も少々物足りなく、トリックのギミックも(少なくとも一般人には)身近なものではないために、謎がとかれてもふ~んとしか思えないところがちょっと寂しい。しかし一方では「ためになる」という意味でふ~んとしてしまうところもあり。ちょっと読めばなんとも無い感じで通り過ぎてしまいがちなこの作品だがきっと作中の技術的な現象は相当取材して書いたのであろう事がうかがえる。

この辺の技術取材の積み重ねで物語をつづる手法は後の「天空の蜂」で身を結んだのではないだろうか。

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2005年12月 7日 (水)

ROMMY 日立 沢尻エリカ など

このブログの冒頭。本に出会えた喜びを書いた私ですが、その経緯をもう少し詳しく書いてみます。ひょんな事から新しい趣味を見つけるっていうのは自分に新しい発見が出来て楽しいものです。そんな新たな発見を求めている人に少しでも参考になればと。

以前は私、会社へは車通勤をしていました。電車で行くと乗り換えやなんやと30分以上かかるところを車では10分でいける。しかも夏の暑さや冬の厳しい寒さとは無縁。
しかし会社の移転に伴い電車通勤に切り替え。行き帰りで都合90分の通勤時間。元々待ち時間が苦手な私はどうにかして暇を潰そうといろんなアイテムで気を紛らわす努力をしています。例えば携帯ゲーム機を持ったり、ウォークマンを聞いたり、電子ブック(Σブックというヤツ)を購入したり。しかし最も携帯性に優れて汎用的なグッツはやっぱり携帯電話のi mode i アプリ。そう、私は電車での移動や道を歩いている時もほとんど携帯の画面とにらめっこ。2ch掲示板を見たり、ネット型のi アプリをプレイしたり。
特にお気に入りだったのは「牧場物語」。自分の畑を持って種を植え、水をやり、2~5日経つと(実時間で)トマトやとうもろこしの実がなる。それを収穫して売ってお金にする。お金をためて牧場を拡大する。更ににわとりや牛を購入して、卵や牛乳を採取する。……という具合。

通勤の90分間はひたすら牧場の単純作業に費やされ1日の作業が終わると丁度目的地につくような感じ。ある意味Bestな暇つぶしだったわけです。でもそんな生活が1年続き、そろそろやることもなくなったので牧場の登録をやめたのですが、そこでこの1年を振り返ってみてちょっと愕然。何も残っていない……。

ひと月20日の営業日だとして、一日90分の通勤時間。つまり1年にして360時間をその単純作業に費やしていた計算になる。「これはもったいない」と思って始めたのが読書のきっかけ。

しかし一口に読書と言っても問題はどこからとっかかるか?
いかんせんほぼ20年くらい読書癖が無かった自分。いざ読もうと思っても何から読んでよいのか?下手な本を選ぶとつまらなくてまたトラウマの上塗りにもなりかねない。とりあえず昔は横溝正史などが好きだったのでミステリージャンルが良いとは思っていたのだが、今の作家は誰も知らない……

と、ここでお世話になったのが2chの掲示板。ネット時代はここが便利です。ミステリ板にある マジで「やられた!」ミステリー のスレッドのテンプレにある本を手始めに、と手にとったのが綾辻行人の『十角館の殺人』

いや本当にこの本でよかったです。これのおかげでミステリ魂が復活しましたから。通勤読書を始めてもう半年くらいになりますが、やっぱり携帯依存していた頃に比べて充実度は高いですね。


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【本】

「ROMMY」まだ半分ですが面白すぎです。
ROMMYのモデルって勝手に椎名林檎って決めてるんですけどどうでしょう?

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【AV家電】

HITACHIのHDDレコーダー(DV-DH1000W)を購入。地上デジタルを2番組同時にハイヴィジョン画質で録画可能。自分は昔からAV製品はそれなりに揃えているほうだとは思うが日立は初かも。それほどこの製品はタイムリーでした。しかもヨドバシでポイントついて実質12万円の買い物。非常に満足です。

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【ドラマ】

ヤマヒサのCMで出ているタレントが気になり調べたら沢尻エリカらしい。名前だけは前から知っていたが今までほとんど注目してこなかった。しかしこのCMで再注目。どうやら今のドラマにも出ているらしいので一応録画チェック。しかしまだ見れていない。

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2005年12月 5日 (月)

ROMMY

「双頭の悪魔」有栖川有栖 読了 ☆☆☆

ミステリーの感想は下手をするとネタバレにつながるので人に伝えるのは難しい。まあ、この作品の場合は有名作家でしかもかなり昔の作品なのである程度のネタバレは許されるであろうが……

橋をはさんだ2つの村でそれぞれ殺人が起きる。高知県の山奥の村なので悪天候によりお決まりのごとく外界からの連絡が遮断する。このシリーズの主役、ミステリー研の学生4人組はそれぞれの村に分断され、警察が到着する前にそれぞれの推理力で事件を解決するべく奮闘する……というのがあらすじ。置かれたシチュエーションがちょっとひねったクローズドサークル(※1)なのでドキドキ感が楽しめます。またミステリーな怪しさに磨きをかける鍾乳洞なども登場。いやがおうにも期待が高まります。

橋の崩落によって分断された双方の町で同時に発生した殺人をどう結びつけるのかがこの作品の肝であり、メイントリックでもあるわけです。怪しげな鍾乳洞がどちらの村にもあることから一瞬ある事が想像されるのですが、まぁそれはそれ。そんな単純には事が運ばないわけで。そんなミステリーっぽいアイテムにミスリードされながらも心地よく読者を騙していくわけです。
最期のトリックは……

まあこれは言えませんが、いわゆる○○殺人と言われているものらしいです。(僕はこれらのジャンル分けに関しては詳しくありませんが)このトリックの起源(最初にこれをやった作品)って何か有名な作品であるんでしょうかね?ミステリーに限らないですが、「この手法は最初に誰がやった」ってテーマでいずれは深く探求したいと思っています。


(※1)ある閉ざされた空間で発生する事件の物語を総称して。例えば雪山の山荘に閉じ込められた中で起きる殺人などが代表例。限定された空間と限定された登場人物の中でくり広げられるサスペンスフルな推理劇が魅力のスタイル。



「ROMMY」歌野晶午 読書中 ☆☆☆☆

まだ事件の発端ですが、やっぱり引き込まれます。「女王~」「葉桜~」ともに大当たりだったので今のところハズレ無し。(まぁ、ネットで評判のいいのを選んで読んでいるってせいもありますが……)「女王」なんかは冒頭あたりはかなりインパクト強かったが、読了直後はまぁ、こんなもんかな的な感想だったのですが、日が経つにつれて何かひっかかってきている作品。
しかもここ数日、小1女生徒の殺人が続いている中で、妙に思い出される頻度が高くなってきている。やっぱりラストの主人公の心理描写が最近妙にリアルで生々しく感じる今日この頃。

東野に次ぐお気に入り作家になりそうな予感。

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2005年11月27日 (日)

こんかいは経過報告のみ

忙しくてなかなか書けず。
とりあえずその間読んだ&観た作品を列挙



「女王様と私」歌野晶午 ☆☆☆☆
「葉桜の季節に君を想うということ 」歌野晶午 ☆☆☆☆
「どんどん橋、落ちた」綾辻 行人 ☆☆
「月光ゲーム」有栖川有栖 ☆☆
「双頭の悪魔」有栖川有栖 読書中 いまのところ ☆☆☆


映画
「世界の中心で愛をさけぶ」☆☆☆☆
   

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2005年10月26日 (水)

バーストゾーン

バーストゾーン読了

物語のテイストが前半部分と後半部分でがらりと変わってしまうような作品をたまに見かけることがあります。
近未来の日本(のように見えるがどこにも具体的な言及は無い)はテロがはびこる荒んだ世の中。テロの脅威に怯える人々。(人々は敵をテロリンと呼ぶ)テロに対抗すべく愛国心を煽り、軍隊を組織する国家。そして大陸で密かに進行している国家プロジェクト「神充」とは何か?

ひたすら描かれるバイオレンスとグロの世界。物語序盤はバトルロワイヤル2的な世界が繰り広げられるのでは?と思わせます。しかし主人公がテロの本拠地「大陸」に渡った辺りから様相が変わります。テイストが変わるというよりは小説のジャンル自体が変わったと言ってもいいかもしれません。個人的にはこのような構成は好きなのですが、お話自体はもう少し深みが欲しかったと思います。決してつまらなくは無かったけど、ちと長すぎました。


「女王様と私」(歌野晶午)
読書開始。序盤はまずます。先が気になります。

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2005年10月 8日 (土)

ランド・オブ・ザ・デッド つづき

ゾンビの続き

で、結局はリメイクドーンもランドも既存のゾンビルールの呪縛から解き放たれる選択をしたわけです。しかしそのアプローチは全く異なります。リメイクドーンの場合は「走るゾンビ」というところが大きな特徴です。走ることによってゾンビ映画のいわゆる「ノロノロ、じわ~~」って言う怖さの価値観をぶち壊し、ひたすらスピーディなモンスター映画に変容させる事に成功しています。最初の10分間のシーケンスで「このゾンビ映画はこんなノリだ!」って言う宣言とも取れる怒涛のノリで非常に好感がもてます。

しかしやっぱり冷静に見るとあくまでもロメロ「ゾンビ映画」の確固たる存在を肯定した上で、ここをこうすれば面白くなるというアプローチである事に間違いありません。まぁ、観客である僕等もよく映画を見た後に仲間とだべるじゃないですか。「あそこをこうしたらもっと面白くなったのに」っと。
まったく0から作り上げるクリエーターの苦労と、既に目の前にある作品について「こうすればもっと良くなる」という思考とは、物作りのパワーとしては全く違うものがあります。しかし、ある意味観客の求めていたものを実現化するつくり方でもあるので観る者にとっては非常に面白いものになる可能性も大いにあります。そう言った意味でリメイクドーンは後者のスタンスに近いのかなと思います。もっと言えば「ゾンビ」以降のゾンビ映画は全てがこのスタンスだと言っても過言では無いかもしれません。

やっぱりランドは違いました。

本家ロメロは作り方のスタンスから違います。もう冒頭のシーンから独自のゾンビクリエイトなオーラがびしばし伝わってきます。ゾンビルールとしての新しいルール作りのクリエイト魂が感じられ威風堂々たるものがあります。

純粋に2時間の暇つぶしとしてどっちが楽しいか?と問われたら僕は「リメイクドーン」と多分答えます。しかし、クリエイト魂に触れたときのわくわくするような楽しさ、うれしさは「ランド」のほうにあると思います。



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次の書籍を購入。
「バースト・ゾーン」吉村萬壱

   

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2005年10月 7日 (金)

容疑者Xの献身

「ハリウッドはネタが無い」と最近よく耳にします。

確かにリメイクだとか続編だとかが目立ちます。
今の製作者達は大変です。映画が誕生して間もない頃は全てが新鮮でネタになりました。ただ単に汽車が走っているところを撮影しただけで、映画館の観客はそのリアリティにびっくりしたと聞きます。ところが映画も誕生してから100年以上もたつと、どんなにCGで驚愕な映像をつくろうと誰も驚いてくれません。それこそ誰もがやってないネタなぞ、そう簡単に見つかるわけがないのです。


「容疑者Xの献身」(東野圭吾)読了。


某掲示板ですこぶる評判が良かったので文庫本化を待てずに購入。一気に読破してしまいました。ミステリーと言えば奇抜なトリックが花形なわけでして、あっと言わせるトリックはやっぱり読者としてミステリに期待する大きな比重を占めているわけです。

しかしここでさっきの映画の話を思い出してください。ミステリのトリックこそ古今東西、小説はもとより映画やゲーム、演劇などさまざまなメディアで創作されてきました。もう新しいネタなど残っているのでしょうか?

なので現代の作家さんは大変なわけです。先人達が残してきたトリックの数々を避けつつ、しかし読者をビックリさせるネタを提供しなくてはならない。読者は奇抜なトリックに飢えている。俺をビックリさせてくれと。現代のミステリ作家はそんなプレッシャーを受けつつ非常に高いハードルを要求されている。

かわいそうである。

人間そんなにぽんぽん新しいアイディアが出てくるわけがない。しかも困ったことに読者にも学習能力がある。あるトリックに驚いても免疫がついてきて、次は騙されまいぞと身構えてくるからちょっとやそっとのトリックでは見破られてしまうのである。
でも、だからこそ本当に奇抜なトリックに出会った時はミステリファンとしては至福の喜びを味わう事ができるのである。「占星術殺人事件」(島田荘司)はそんなトリックに飢えたミステリファンに、ビックリを与えたエポックメイキングな作品だったのではないだろうか?

「だろうか?」と書いたのは僕がそれをリアルタイムで読んでなく、しかも不幸なことに某漫画を先に読んでしまった後だったのでそう書いた。掲示板などで他の人の話を聞いていると、きっとそうだったんだろうなぁという意味での「だろうか?」である。確かに僕はそう言った意味で「ビックリ度」は薄まってしまったわけですがそれでも充分面白い作品でした。

「容疑者X」

僕はそんなに多くの過去作品を呼んでいるわけでは無いので、今まで類似のトリックがあったのかどうかはわかりませんが、これにはやられました。「占星術」ほど派手な仕掛けでは無いので、後世に残るエポックなものになるかは微妙ですが、非常によく出来たトリックです。こんなに多作な東野圭吾でも、いきなりこうゆうのがボコッと出てきてしまうところがスゴイです。

ちなみにこの作品、トリックだけがメインではないです。それ以外の部分も本当に完璧です。ぜひ。

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2005年10月 4日 (火)

姑獲鳥の夏 読了

最後の怒涛の解決編はミステリーとしては多少アレな気がしますが(読者に解決させるにはあまりにも情報が足りなすぎる)しかしそんなことも気にさせないくらい非常に面白かったです。

読む前は(映画の予告編の雰囲気も相まって)ミステリーというよりホラーな系統だとすっかり思っていたわけですが、蓋を開けてみるとオカルトの皮をかぶった超論理ミステリーと真逆の性格を呈していたのは大変面白かったです。

とりあえずシリーズの続きをいずれ読むでしょう。

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2005年10月 2日 (日)

引き続き 姑獲鳥の夏

まだまだ引き続き姑獲鳥の夏。

読書の時間が往復1時間強の通勤時間にしか割いてないため読み進めるのがそんなに早くない。僕の場合平均すると標準的な文庫本(2~300ページ)だと週に1~2冊がペース。つまり1日7~80ページ。通勤時間がやっぱり8~90分だからだいたい1分1ページのペース。

しかしこのペースも文が読みやすいのが前提。読みやすいとは現代の、しかも口語文的なものが読みやすい傾向にあるらしい。逆に漢文的、古文的なのは時間がかかる。あと下手な翻訳物も。作家で言うと東野圭吾がやっぱりダントツ読みやすい。一方、小野不由美の「東亰異聞」なんかは結構読みずらかった。(作家がダメというわけではなく文体が。屍鬼なんかは平気)

で、京極夏彦はどうだったかというと……

これが結構読みやすい。いや、京極堂のウンチクが始まると結構難しい単語や文が出てくるのだが、分かりやすい説明と説得力でぐいぐい読ませる。霊現象を信じる思考と量子力学をからめた話など非常に面白いというか。この作品(というか京極堂)の魅力は呪術や陰陽道などを単なるオカルトとしてではなく、科学と論理で納得できるような(風)で処理しているのが魅力。

昔からオカルト系のミステリーをどのオチに持っていくかは古今東西のクリエーターを散々悩ませてきたネタではあろうと思う。つまりオカルト色を帯びた事件の謎(死者が蘇ったり、呪いが存在したり)で散々読者の興味を引っ張っていき、最後、本当にオカルトネタで落とすのか(幽霊が出てきたり、魔術が存在したり)、実はちゃんと科学で説明できる誰かのトリックで落とすのか。

映画で言うとM.ナイト・シャマラン映画でその両方が見れる。
「サイン」と「ヴィレッジ」。どっちの作品がどっちのオチを使っているのかはネタバレになるので言わないが、僕の好みは「ヴィレッジ」の方に軍配が上がる。「サイン」であっちのオチを使って不評だったので、「ヴィレッジ」でシャマランは反対のオチでリベンジしたと僕は思っている。

話はそれましたが「姑獲鳥」はまだ終盤のクライマックスを読み終えた所。「衝立のむこうで起こったこと」の場面ですね。残りページを見ると、もうひと波乱起きそうですが、とりあえずここまでは大満足です。

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